上の写真は、病院に貼ってあったことばです。
「赤ちゃんを世界に運んでくる出産は、特別な経験です。私たちの医療チームは、患者の支払能力や保険の保障範囲に関わらず、質の高い産科医療の提供を約束します」と書かれています。じーん。
いや、当たり前のことな気もしますが、ここアメリカにいると染みるひとこと。しかしふと、無保険で支払能力がない場合、どうするんだろう? と現実に戻る。(その場合はきっと病院のソーシャルワーカーが相談に乗ってくれるのでしょう)
驚きの連続。アメリカでの出産
出産は、その国の方針や個人の考え・こだわりが、つぶさに現れる大イベントです。
日本生まれ、日本育ちの私がアメリカで出産することになれば、「そんなのアリ・・・?」と驚くこともしばしば。そのうちのいくつかをご紹介します。
1、連休前に計画出産
友人は連休前日に、産婦人科医から「連休入るから、その前に促進剤打って産もうか」と言われていました。あら? 休日と出産、そもそも全然関係ないよ? と思っていたら、我が身にも・・・。
11月20日が出産予定日だった娘。クリスマスと並ぶアメリカの大イベント、感謝祭(サンクスギビングデー)の間近だったのです。日本で言うと、お盆かお正月といった規模の国民の休日。ほとんどのお店が閉まります。病院も手薄になるということで、その前に産んじゃおう!と言われました。
なるべく自然に出産を待ちたかった私はそう伝えたものの、予定日を越えることのリスク、病院で十分にケアされないことのリスクを説明され、「リスクは説明したから、何かあっても自分を訴えないように」と言われました。ひい!さすが訴訟大国アメリカ・・・!
結局、促進剤を入れて産む予定だった日の朝に破水し、自然に産まれてきてくれました。
2、サプリ・サプリ・サプリ!
サプリ大国アメリカは、産前産後にサプリの摂取を推奨しています。
Prenatal Supplementといって、妊娠・授乳期に必要な栄養素を網羅したサプリをすすめられます。
日本では、栄養はなるべく食事から、が基本ですよね。
妊婦にすすめられるサプリはせいぜい、葉酸くらいではないでしょうか。
なんと産まれたばかりのこどもにも、サプリ(ビタミンD)をすすめられます。
液体をそのままスポイトで、もしくは授乳中に乳首につけて、あげます。
ビタミンDは母乳からの摂取がむずかしく、アメリカだけでなく、カナダやオーストラリアでも推奨されているようです。
(参考:厚労省の総合医療情報発信サイト)
http://www.ejim.ncgg.go.jp/public/overseas/c03/10.html#d08
赤子にサプリ・・・。自分の中の「ジョーシキ」がガラガラとくずれていきました。
3、「無痛分娩」って?
「アメリカって無痛分娩が普通なんでしょ?」日本でよく聞かれたことです。
アメリカでの出産は確かに、麻酔を使う分娩が「普通分娩」です(麻酔は使わないことも可能です)。
私が産んだ病院は申告制で、「麻酔入れてください」と依頼をしたら麻酔科医が病室まで来て、入れてくれるシステム。いつ注入するかは患者の自由です。早めに麻酔を使う人もいますが、私は陣痛を経験したかったので、ぎりぎりまでがんばろうと思っていました。
お産がすすんで、激しい陣痛の波もけっこうガマンして、よし、そろそろ!と思って麻酔をお願いしたら「ごめん、たったいま麻酔科の先生、帝王切開の手術に入っちゃった。1時間くらいで戻るから、それまでがんばって!」
ちーん。そりゃないぜ。呼んだらすぐ来るって言ってたよね・・?
それから1時間弱、あれぞ地獄の苦しみでした。
「ごめんね遅くなって!」とやっと現れた爽やかな麻酔科医に、その爽やかさいらないからはやく!と心の中で悪態をついて、子宮口7センチのときに麻酔を入れてもらいました。
ふう。そうしてやっと楽に。ありがとう麻酔。
その後はだいぶ楽になったとは言え、最後まで完全に痛みがなくなることはなく、感覚的には「無痛」とはほど遠いものでした。「無痛」分娩って、考えてみたらとってもふしぎな響きですね。

病室のようす。
入院から退院まで、ずっとこの部屋で過ごしました。
4、産後一日半で退院
アメリカは産後の入院期間がとても短いです。私の場合は夜に出産し、翌々日の朝には退院しました。
出産日を入れて2泊の入院が一般的です。帝王切開の場合は3泊〜4泊です。
入院費用が高いことはもちろん、病院は医療機関であり産後のケアをする場所ではない、と考えられているため、入院期間が短いのです。
ちなみに、「床上げ」ということばはアメリカにはありません。
退院翌日から赤ちゃんは外に出すように指導されますし(太陽の光を浴びせるため)、母親も激しい運動など以外、ふつうに動いて大丈夫と言われます。
そのため、産まれたばかりの小さな新生児をだっこしているパパ・ママを外でよく見かけます。あんなに小さいのにだいじょうぶかな・・とこちらがヒヤヒヤ。
5、夫、医療チームの一員に
日本で夫の立ち会い出産というと、ベッドの横で妻の手をさすりながら励ます、というイメージですが、アメリカでは全然違います。
夫はまるで病院のスタッフさながら、出産に参加します。
陣痛の間隔が狭くなったら、妻の下半身側に立ち、看護師さんとは反対側の足を持っていっしょに”Push!”(いきんで!)のかけ声。立ち会いどころか、もはや医療チームの一員。すべて丸見え。
「ほら、頭見えてきたでしょ、よく見て!」など看護師さんに促され、戸惑い気味の夫。
私も戸惑う。夫婦ともに、まさかここまでの参加は想定しておらず・・・。
でもそれどころでもない。
噂では、妻の出産に立ち会い、失神して運ばれた方もいるらしいです。
ちなみに、帝王切開でも希望すれば立ち会いは可能でした(その場合は妻の上半身側に立つ)

Welcome to the World!!
エピローグへ続く