育児の百科事典というと、何か気になったり困ったときなどに該当ページを探して読む、つまり調べるためのものをイメージするでしょう。もちろん、妊娠期から6歳まで、月齢ごとにありとあらゆる解説が丁寧に載っています。おむつの替え方の基本から、予防接種、離乳食、病気や発達のこと、遊びやお歌まで。
でもこの分厚い事典は、ちょっと違うんです。知りたいことを調べるんじゃなく、ずっと読んでいたくなる。用がなくても開いていたくなる。
収められている情報量をよりも、込められた「愛」の量がまさっている、そんな本だからです。
教育学者、小児科医、言語聴覚士の、3人の大先生による共著ですが、それがなんとも堅苦しくないし、偉そうじゃない。「この時期、お母さんはきっとこんなふうに苦しいですよね、大丈夫。赤ちゃんは大丈夫。お母さんは自分を責めないでいいからね」。どの章のどの項を読んでも、共感といたわりと、優しさと励ましに満ちているんです。こちらに合わせてしゃがんでくれて、頭をなでてくれてるような、大きく包んでくれてるようなあったかい感じ。初めての子育てで、孤独と不安で押しつぶされそうな深夜にそっとページをめくり、何度じわり涙がにじんだかわかりません。
これから出産の人、0歳児を育てている人に特におすすめしたい本です。(妊娠期~誕生~1歳までの話で本の半分を占めているので)
(おのでらえいこさんのイラストがまた最高。はだかの赤ちゃんのイラストなんて、肌の柔らかさや甘い匂いまで伝わってくるようで、自分の子じゃないのに可愛くて愛おしくて、胸がぎゅっとなるのです。)
もう1つお伝えしたいのは、こちら、パパにウケると思います。
著者の先生2人は男性ですし、体や発達の変化のさまざまなメカニズムをグラフやイラストでわかりやすくまとめてある百科事典は、ちゃんと構造的・理論的に理解したい男性向きともいえます。
(親しい友人に赤ちゃんが生まれ、夫婦それぞれ一番役立った本を贈ろうということになったとき、うちの夫が選んだのがこの本でした。)
パパがやってあげるといい遊びも出てくるし、要所要所で「このころパパは…」といった、同情と自尊心をくすぐる投げかけと激励の詰まったコラムもあります。「先生たちどんだけわかってる!」とぞくぞくします。
この感覚、分かってもらえるかなあ。私だけなのかなあ。
書店で見かけたらぜひ一度、重たいけど手に取って、どこでもいいから読んでみてください。