郵便局の前で、思わず空を仰ぐ。
深呼吸して、少し笑う。
「よし」。
なんか大丈夫だと思った。
その根拠は?と聞かれたら、なんだろう。
郵便局の窓口で少し会話になり「認可保育園の申請なんですよ、祈る気持ちで出します」と私が言うと、局員のおばさまが「そうですか、入れますように!」と封筒を持ち上げて笑ってくれた、からかな。
今日の空が青い、からかな。
うまく言えないけど、なんかいいぞと思った。
それは、2年前の感じとはぜんぜん違うなあと思った。
忘れもしない…。長男のときの保育園申請。七転八倒の物語。ロードオブ・ザ・ニンカ。
(こっから回想長いです)
〜〜〜
そもそも3月生まれなので、申請の出せる生後半年の時点で9月。空きなんて出るわけなく(産む月も切実に大事って意味がやっとわかる)、認可外の園に通って待機することになるのだが。
大きなチャンスがめぐってきた11月。翌4月入園分の申し込み。
それは、神奈川県の待機児童数1位の藤沢市で、さらに1歳児クラスという一番激しい競争に参戦することを意味していたのだった。
びゅうううう。荒野に降り立つ孤高のガンマンの気分で保育課窓口へ。過去の仕事のプリントアウトの束に、便箋5枚の嘆願書をつけた「参考資料」も提出。窓口で「お忙しい所すみません」を連発しながら、感じよく内容の説明もさせていただいた。職員の方の感触もすごくよかったし(今思えばまったく関係ない)、「きっと入れるでしょう強運な子だからね」とどこかで信じてた。
で、2月。待ちわびた封筒が届く。
…落選。
「オウオウオーウ!!」と玄関先で声をあげた。そう来るか。マジか。シビアか。
こりゃーちょっと、認可外にこのまま通うのは金銭的にもきついぞーどうしたもんかーと、保育課に電話して状況の相談。
週3日の「一時預かり枠」があると(今ごろ)知り、「せめてこれだ!」と食らいつく。
「詳しくは各保育園に問い合わせを」と言われ(←実はこれ一番困るよね、保育課に情報まとめてくれーい)、シタテに出る癖がついていた当時の私は「でーすーよーねー」と、言われた通りいくつかの保育園に電話をかけて申し込みの仕方を確認。
そしたら想像してたのと違って、一時預かりクラスってのが別個であって、通常の園児に混ざれるわけじゃないと知って。
「えっと、お散歩は?」「なるべく行くようにはしますが部屋遊びが中心ですね」。
「運動会は?」「出場できません」。
「…お誕生会は?」「一時預かりの子のお祝いはできませんが、会場に入って会の雰囲気を味わいます」。
もうこれ聞いてね、電話口で不覚にも涙がぽろりと出てしまったわけ。うちの子、誕生日のお祝いもしてもらえないんだって。私は一体、なにをしようとしているんだろうって。
それでもね、情けないけど。
背に腹は代えられぬから。週三回だけでも保育園に預かってもらえるなら、他のいろんなことはカバーするから。お散歩もお誕生会も私が盛大にするから。と、覚悟を決めて、申し込みすることにした。
それは確か2月の終わり。決戦の日の朝。自分なりに恥も外聞もないマックスの防寒をしてお目当ての保育園の門の前へ。9時から開門で、私が着いたのは5時45分だった。
で、結論から言うと、落ちた。めちゃくちゃ寒い中3時間15分待ち続けて、ギリギリ、私の1人前で枠が、埋まった。
現場に着いてから知ったが、2時から待っていた最強ママ集団がおり、経験者だったらしく椅子やアツアツのコーヒーやトイレ交代など万全で「ねーどうするー今年は何曜日にするー」的に枠を次々に取っていった。
・・・。
なんだこれ。
なんだこの世界わ。
絶対おかしいからこんなの。ばかげてる。ノーノーリディキュラス。オカシイヨーニッポン!
さんざん腹を立て、もう市長選に出馬するしかないかーってほどいろんなものに対して憤ったのち、しゅーっと魂が口から抜けて、私は戦意を喪失した。
あー、あれだ、やめよう藤沢市。移住しようどこか遠くへいこう。ここじゃないんだ私が居るべき場所は。そういう意味か!あははー
そんなふうに半笑いで岩手県や高知県の物件など探していたら(もちろん現実的なことは一切無視して)、2次募集の結果がポストに来てて、
「もしかして? いろいろあって、からの? 展開で? まさかのー?」と震える手で開封、したら、落選だった。
もはや何の感情も湧いて来ず、棒読みでつぶいた。「いいんです。その分どなたかが幸せになるのなら」。
1歳の誕生日を迎え、嗚呼、春の光がまぶしいな、と思い始めた3月20日。
超・謎のタイミングで、超・謎の封筒。ん?
わーーーキターーーーーーーーーーーー!!!!!
びっくり仰天。青天の霹靂。9回裏満塁ホームラン。
それは保育園合格の通知だった。第二希望だった公立保育園。
嬉しすぎて自転車に息子を乗せて海まで爆走したのを覚えている。
「ほいくえんーー!はいれたーーー!!!!」すれ違う人全員に伝えたかった。
怒ってごめんよ藤沢市。ここが、私の、居場所、なんだね・・・ほろり。
かくして2年間、通わせていただきましたありがとういい園です。
はあ、はあ、なんだっけ、なんの話だっけ、
ああ、次男の認可保育園ね。
うん。
大丈夫大丈夫。
きっと入れる。し、もし入れなくても大丈夫。
行くべきとこに道は開かれるし、どうなっても何とかなるし私が幸せにしちゃる。
そう思えるのは、
1つは、一度経験して七転八倒やりたおしたから。人事を尽くして天命を待つしかないと知ったから。
もう1つは、その天命に関して、なんか最近ポジティブに感じてるということ。それは、うまく説明できないんだけど、ぎゅーっと力を入れるんじゃなく、ふわーっとゆるめているからかなと。
イメージでいうと、「必勝!」と目をつぶって祈ってるんじゃなく、「ロマンスの神様」でも歌ってるんるん待ってる感じ。心と体を大きく世界に開放して、よい運気ってゆうか星がめぐってくるのを信じてる感じ。
(そういう状態にあるか、スーパーでわかる。売り場を歩くと野菜の方から「俺だよー」と手を挙げてるように思うくらい、ぱぱっと買うものが決まるとき、私的にいい状態。逆に、野菜たちがしーんとしてて、自分の頭であれこれ考えて無駄に時間がかかるとき、自分はいま閉じているんだなと思う。)
開いた自分にしておくことができれば、保育園の結果だけじゃなく、いいものが次々巡ってくる、はず、最近の私は思うのです。
巡れめぐれ。申請出したハハ諸君に幸運が訪れますように。
ハハmeetsニンカ!ロマンスの神様、お待ちしていますー
なにとぞ!
(このコーナー、つぶやきのわりに超長げーと思ってるそこのあなた!正しいよ!笑)
(Illustration: Ayako Kubo)