11月の後半、とある一日。
雨上がりのお山で、運動会がありました。
娘が通う、園舎を持たない「山のようちえん」の運動会です。
運動会って、やることが事前に決まっていて、
当日に向けて練習して、競う、発表する。
そういうものだと思っていたけれど、お山の運動会は、まったく違いました。
まず、玉入れの玉は松ぼっくり。
もう、普通じゃない感じがぷんぷんします。
玉を入れるのは段ボールで作ったお手製の箱で、3つあります。
それを持ちたい人が持ち、入れたい人が松ぼっくりを投げ入れます。
よーい、ピーっ!の笛でみんな松ぼっくりを投げまくり。
チーム分けも無いし、どの箱に入れてもいいし、大人も入れていい。
箱を持っている人がうろうろ動いたり、立ったりしゃがんだりするので、
これがけっこう難しいのです。
終了の笛の後、ひとーつ、ふたーつと松ぼっくりをカウントします。
数えてもチーム対抗じゃないし、どういう流れになるの?と見守っていたら、
「今回は15個入ったから、次はもっと入るようにがんばろう!」と園長。
おー!と盛り上がる子供達。そして2回目に突入。
2回目は1回目よりたくさん入って、皆でやったー!増えたー!と大喜び。
戦う相手は、数分前の自分達だったようです。
続いての競技は「崖のぼり」。
崖をのぼり、のぼりきったらゴールテープ目指して駆け抜けます。
崖をのぼるコースも、ゴールまで走る順路も決められていないので、
各々好きな場所に挑みます。
得意な場所をスイスイ上っていく子、難所を選び苦戦する子。
まず、ぐるっと1周あたりを走ってから崖に取り掛かる子。
そんな具合なので、どの方向からゴールテープに向かってくるかも
まちまちで、前から後ろからゴールに突入してきます。
応援する方も、「あれ、どこに向かってるの?」「お、そっちから来たか!」と
目まぐるしいのなんの。
難所に挑む年中さんを、崖の上から応援し、見守る子供達。「もうすぐだ!」「よし、がんばれ!」と声援がとびます。
大盛り上がりだったのが、綱引き。
1試合目は「年長さんVS年中、年少さん」。2試合目は、「子ども達全員VSお山のスタッフ」。
このあたりまでは事前に決められていたようですが、
後はその場のノリで対戦カードが決められていきました。
園児の兄弟姉妹が入ったり、筋肉自慢のお父さん1人VS園児全員、なんて戦いも。
もう1回やりたい!という声が何度もあがり、そのたびに「じゃあ次はどうする?どんな戦いにしようか」と、わいのわいの話しながら決めていきます。
事前に、「子どもたちが納得するまでやるので、終了時間はあくまで目安です」と言われていたのですが、その意味がよくわかりました。
皆が納得いくまでやる、とことん遊び尽くす。
でも、参加しなくちゃいけないという義務はこれまた全然無くて、
やりたくない子はやらないし、リレーの列の先頭に並んでいた子が、
「やっぱりやめた!」と離脱しても咎められたりしません。
崖のぼりも綱引きもやらないよ♪とポンポンを持って応援に徹する女の子も。
この運動会には、やりたくないと泣き出す子も、列から飛び出して注意される子もいませんでした。
やりたくなければやらなきゃいい。整列してまっすぐ歩く必要もないのですから。
最後の競技はリレー。
下り坂は特に圧巻で、野生動物が獲物を狙って駆け抜けていくかのような俊敏さ。
日々山中を駆け巡る子供たちの身体能力の高さ、度胸の良さを改めて目の当たりにし、
その成長ぶりに、母は胸が熱くなりました。
一風変わったお山の運動会。
子供達に、自由ってこんなにステキなことだよ。と教えてもらったような気がします。